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東京地方裁判所 昭和43年(ワ)10605号 判決 1969年5月09日

原告

上原勢津子

代理人

坂根徳博

被告

パシフィック産業株式会社

代理人

平沼高明

主文

被告は原告に対し、二五九万四一八七円およびうち金二三六万四一八七円に対する昭和四三年四月一日から完済に至るまで年五分の割合による金銭を支払え。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用はこれを五分し、その三を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。

この判決の第一項は、仮りに執行することができる。

事実

一、当事者の求める裁判

原告―「被告は原告に対し四一三万円およびうち金三五七万円に対する昭和四三年四月一日から完済に至るまで年五分の割合による金銭を支払え。」との判決および仮執行の宣言。

被告―「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決。

一、原告主張の請求原因

(一)  傷害交通事故の発生

昭和四二年五月二七日午後七時八号ごろ、東京都新宿区淀橋六六五番地先の道路において、訴外塩谷運転のトラック(品川四は四九八〇号、以下被告車という。)と、原告が接触し、よつて原告は後記傷害をうけた。

(二)  被告の地位

右事故発生の際、被告はその従業員塩谷に被告車を運転させ、その仕事に使用し、もつてこれを自己のため運行の用に供していた者である。

(三)  原告の蒙つた損害

(1)  原告の生育歴、事故発生前の心身の状況、受傷の部位・程度および診療の経過ならびに後遺症

原告は昭和三四年四月一五日生まれの女子で、生来健康に恵まれ、順調に成育し、本件事故発生当時八才で小学二年次にあたり、心身共に健全であつたところ、右事故により頭部陥没骨折兼脳挫傷の傷害をうけ、昭和四二年五月二七日から昭和四四年二月二八日までの間、一箇月間にわたり入院に、二〇箇月間にわたつて通院し各加療をうけたものの、本復するに至らず、現になお外傷性てんかんを遺し、これが発作防止のため長期間にわたり抗てんかん剤を服用し、かつ、医師の継続的診療を受けなければならないし(ロ)知能低下も招来した後遺症をのこすに至つた。該心身の障害程度は、労基法施行規則身体障害等級表九級に相当する。

(2)  労働能力の一部喪失による逸失利益一五七万円

原告は本件事故発生当時、小学二年次に属し八才であつたが、昭和四三年三月には小学二年を修了し、その後一〇年経過した昭和五三年三月には高校を卒業し概ね一八才に達するが、その頃から概ね五五才に達する昭和八九年三月末日頃まで三六年間にわたり、雇傭労働または家事労働もしくはこれらの双方に従事し、年間二八万八〇〇〇円(第一八回日本統計年鑑所載昭和四一年度全産業女子労働者平均月間賃金二万四〇〇〇円による)相当の収益をあげ得たところ、前記後遺症により労働能力の三五パーセント(年間一〇万八〇〇円)を失つた筋合であるから、ホフマン式計算方法に従い年毎に五分の割合による中間利息を控際し、昭和四三年三月末日における右労働喪失損総額の現価は、一五七万円をくだらない。

(3)  慰謝料 二〇〇万円

原告は、前記のとおり通算二一箇月間の入・通院加療を余儀なくされ既に多大の精神的苦痛を蒙つたが、前記後遺症により、将来にわたり深甚な精神的苦痛を甘受させざるを得ず、年少にして受傷し、後遺障害をとどめるに至つたものであるだけに、将来の苦痛もまた長い全生涯にわたるもので、慰謝料額算定上特別の増額事情があるものというべきである。右入・通院期間の慰謝料額は六〇万円が相当(入院一箇月間につき一〇万円、通院期間中につき、一箇月三万円の割合)であり、入・通院期間以外の将来にわたるそれは、特別の事情がない限り、労働能力の喪失は、収入生活におけると同じように一般生活の障害にもなるから、労働能力の喪失割合を手がかりに一〇〇パーセント喪失の場合の慰謝料四〇〇万円に対する三五パーセントにあたる一四〇万円が相当である。

(4)  弁護士費用 五六万円

原告は昭和四三年五月三一日、東京弁護士会会員弁護士坂根徳博に本訴の提起方を委任し、本判決言渡日に手数料、謝金各二八万円を支払うことを約した。

(四)  よつて原告は被告に対し、以上合計四一三万円およびうち弁護士費用を除いた三五七万円に対する労働喪失損現価算出基準日の翌日である昭和四三年四月一日から完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

三、右に対する被告の答弁および抗弁

(一)  原告主張の請求原因(一)(二)のうち、被告車が原告に接触したとの事実を否認し、その余の事実を認める。同(三)のうち、原告が受傷加療のため一箇月間入院、その後通院したことを認め、その余の事実は全部不知。原告主張の後遺症については、外傷性てんかんの可能性はあるが、日常生活には影響がなく、学校生活でも特別の制限を加える必要はないのであるから、身体障害等級表九級にあたらず、強いていえば同等級表一四級所定の局部に神経症状を残すものの程度にすぎない。

(二)  免責の抗弁、仮定的に過失相殺の主張

(1)  訴外塩谷は、被告車を運転し時速三〇粁で進行し、本件事故発生現場である横断歩道手前にさしかかつたところ、折柄対向車は渋滞して連らなり、右方のみとおしはきわめて悪く、右方からの横断者を発見することは不可能であり、横断歩道上に横断者もいなかつたので、そのまま進行したところ、誰かの声でサイドミラーをみ、原告が転倒しているのを発見し、急停車して被告車を見分したが、接触の痕跡はなかつたものである。右のとおり本件事故発生につき訴外塩谷に過失はなく、本件事故は、左右の交通の安全を確かめないで飛び出し、被告車の右側車体を目前にして狼狽のあまり自ら転倒した原告の過失により惹起されたものである。なお、被告車は構造上の欠陥も機能の障害もなかつた。かように原告の受傷と被告車の運行との間には、因果関係がなく、かりにこれありとするも、被告は自賠法三条但書所定の免責の場合に該る。

(2)  仮り右主張が認められないとしても、右のとおり原告にも事故発生につき過失がある。

(三)  弁済(損害損補)の主張

被告は原告に対し、合計四四万五九一三円(治療費三七万四七四八円、看護費四万九五〇円、入院三一日間の雑費三万二一五円)を支払つた。

四、被告の積極的主張に対する原告の答弁

原告が、被告から本件受傷加療中の治療費等(自昭和四二年五月二七日至昭和四三年五月三一日)四四万五九一三円を受領したことは認める。

五、証拠<略>

理由

一責任原因

原告主張の請求原因(一)(二)のうち、被告車と原告との接触の事実を除き、すべて当事者間に争がない。

<証拠略>によると次のとおり認められる。

(1)  本件事故発生現場の道路・交通状況  本件事故発生現場は、甲州街道と青梅街道とをほぼ南北に通じる通称十二社通りの横断歩道上であつて、青梅街道の南方約二〇〇米の地点にあり、この間横断歩道はなく、現場の南方約一五〇米先にも横断歩道が設けられている。十二社通りは、ところどころ凹損箇所のある幅員約9.3米のアスファルト舗装の車道の両側に、各2.7米位の歩道を控え、その脇に商店舗が櫛比し、人車の交通はかなり頻繁で、前記幹線道路を結ぶところから、しばしば車両の渋帯を招来し、また交通量に比して横断のための設備が不充分であるところから、横断歩道の標示のない場所を横断する歩行者も稀ではなく、横断歩道による場合にも、車列の間隙を縫うような状況になるところ、指定最高速度時速約四〇粁の制限があるほか、格別の交通規制はなく、歩行者のための信号機も設けられていない。もつとも直線路で、夜間も歩道上の街灯と商店街の照明設備とのため、みとおしは良好である。そして本件横断歩道は、幅約3.8米の間、鮮かな白色ペイントで標示され、その北側から北方三米余の地点に白色の車両停止線が設けられており、本件事故発生時刻、青梅街道方面から南進すると、前方約一〇〇米の間をたやすくみとおすことができ、横断歩道の手前五〇米位の地点に達すると、少くともその存在を発見することができたこと、

(2)  訴外塩谷の行動  同人は昭和四〇年五月頃、清涼飲料水の製造販売業を営む被告の会社に自動車運転手として入社し、爾来概ね被告車を運転し主として配達業務に従事していたところから、十二社通りを毎日一、二回通行し、その道路・交通状況を知悉し、本件横断歩道を利用する歩行者が多いことも知つていたところ、当日上野・銀座方面へ配達をすませ、荷台に約一トン位の空壜等を積載し、左側の助手席に同僚の宮本恭文を同乗させ、青梅街道を西進し、これを左折して十二社通りに入り、肩書地の被告方に帰社しようとしたが、十二社通りに入るや、道路右側部分の中心線寄りに対向車両が数珠つなぎになつて極端な交通渋滞状況を呈していたものの、左側部分には先行車がなく、自車が先頭に立つような状態であつたので、車道左側端から、1.8米位(中心線の左寄り七〇糎位)の余地を保ちながら、時速三〇粁位で南進するうち、本件横断歩道手前にさしかかつたところ、該歩道の左側端附近に数人が佇立しているのを発見したが、いずれも買物客で直ちに横断することはないものと考え、他方該歩道の右側附近には、対向車列が続いているのをべつ見しただけで、右方からの横断歩行者はないものと即断し、その後は横断者の存否につき全く配意しないで、等速のまま進行し、横断歩道を通過した頃、該歩道の南側に停止していたマイクロバスの運転手訴外河野正義らに事故発生の旨を告げられてこれを知つたこと、当時南進車の運転者において、遙か遠方から右前方を望見すると、数珠つなぎになつた対向車列に大きい切れ目は殆んどなく、その右側の歩・車道の状況は判然としなかつたものの、前記マイクロバスの前車は、横断歩道の北側に停車しており、横断歩道の標示部分は、横断者において優に進行しうる程度にひらけていたので南進車が横断歩道のかなり手前にさしかかると、横断歩道上の状況を概ね看取することができたこと。

(3)  原告の行動  原告は当時八才で、本件現場附近に多年住み、十二社通りが交通頻繁であることを知つていたところ、当日男友達の矢野某と遊んでいたが、午後七時頃矢野の父の使いで薬局へ同行することになり、本件横断歩道の西端附近にあるアオキ薬局で買物し先頭にたちいくらかはしやぎながら帰途につき、渋滞する北進車の列の中で一時たちどまつたものの、その頃南進車はなかつたので、進来する南進車はないものと軽率に考え、南進車からは横断歩道の右側部分をとおすことがやや困難であるから、このような場合横断歩道による歩行者においても車道東側部分の交通状況を充分確認すべきであるのに、左前方の交通の安全を確認しないまま、両手をあげとびあがるような恰好で足早に横断をはじめたところ、進来した被告車の右側面と頭部とが接触し、その衝撃で一回転し、前記マイクロバスの右前輪附近の路上に転倒したこと。右のとおり認められ、この認定に反する証人宮本恭文同塩谷昭の各証言の一部は、甲第六号証に照らして措信しない。右事実によれば、原告の受傷と被告車の走行との間に因果関係があることは言うまでもなく、本件事故は訴外塩谷の過失によつて惹起されたことも多言を要しないから、その余の判断を加えるまでもなく、被告の免責の主張は排斥を免れない。しかし前示のとおり、本件事故発生につき原告にも過失があるといわなければならず、諸般の事情を総合すると、その減額割合は概ね一割五分程度に斟酌するのが相当である。

二原告の蒙つた損害

(一)  原告の生育歴、事故発生前の心身の状況、受傷の部位・程度および診療経過ならびに後遺症

<証拠略>に弁論の全趣旨を総合すると次のとおり認められる。

(1)  原告は、昭和三四年四月一五日、父国男母和枝間の長女として生まれ、順調に成長し、幼稚園を経て本件事故発生当時、心身ともにまず健全な小学二年生であつた。第一学年の第一学期は、音楽の表現面ですぐれていたほかは、生活行動、学習態度および学習内容ともに普通であつたが、第二、三学期にすすむや、その学習記録は、いわゆる五段階評定で、七教科中、普通程度に評定されたのは体育のみであつて、他の六教科はすべてやや遅れている旨の評定をうけていた。

(2)  原告は受傷後ただちにもよりの駒ケ嶺病院に収容され、左側後頭部打撲、左側頭部裂傷、下腿擦過傷の診断のもとに応急手当をうけ、一旦帰宅したものの、まもなく吐き気を催し、意識溷濁状態を呈し始めたので、救急車で東京医科大学病院に運ばれ、腰椎穿刺、レ線検査、超音波検査、脳血管撮影等により、広範な右後頭部陥没骨折による脳浮腫状態と診断され、翌日緊急手術(右後頭部に縦横各六糎の陥没骨折を生じ、骨折片の一部により、硬膜および右横洞を損傷されていたので、これを除去し、横洞を損傷していた一部骨片は除去しようとする生命の危険を招来するので、骨膜を利用して追圧止血し、骨片をそのままとどめ、骨片除去部はレジン・プレートにより頭蓋整形)をうけた結果、術後経過は良好に推移し、特に神経症状もなく、同年六月八日頃髄圧も正常になつたので、予後を観察することとし、同年六月二六日退院するに至つた。ところが原告は時に頭痛、眩暈感を訴え、怒りつぽくなつたので、脳波検査を続けるうち、同年一一月に至りけいれん波(棘波・徐波)の出現をみ、さらに昭和四三年三月一九日施行の検査でもなおけいれん波が消散しないので、同病院神経外科担当医蓮江正道は、本件受傷に基く脳組織の一部の瘢痕または壊死による外傷性てんかんに罹患している高度の蓋然性があるものと診断し、いわゆるてんかん発作を惹起することを懼れ、抗けいれん剤を服用させながら、経過を観察することとした。同病院に対する通院は、昭和四二年七月三日から昭和四三年三月二一日までの間、実日数合計一〇日程度であつた。抗けいれん剤は、一日三回毎日服用する必要があるところから、その後も原告は二週間に一回位の割合で通院し、経過観察と右薬剤の投与をうけ、現在に至つているものであるが、今後もこの程度の診察と薬剤の供与(いわゆる健康保険を使用する場合、年間九万余円を要する)を継続する必があるものの、抗けいれん剤を服用して発作を抑止すれば、常人に比し生活の改変は殆んど不要の状況にある。なお原告は、昭和四三年五月一〇日、関東労災病院脳神経外科医師大野恒男の脳波検査をうけたが、その際にはてんかん性棘波の出現はみられなかつたものの、同医師は、既往の諸検査結果と病状とを併考し、一応外傷性てんかんに罹患しているものと認め、労災身体障害等表九級に該当するものと診断した。

(3)  原告の父母らは、原告の将来に期待し、高等教育を受けさせようと考えていたので、本件事故後、原告の学習成績がやや低下したことを案じ、原告に勉学方を督励する一方、右成績の低下は本件事故に因るものと思つていること、しかし学習記録によると、原告は本件事故に最も接着する第二学年の一学期では、七教科中、五段階評定上の普通程度の教科四に対し、やや遅れている程度の教科三であり、欠陥一〇日を教える第二学期と同一四日に達する第三学期ではいずれも普通程度およびやや遅れている程度の教科とも三、遅れている程度のもの一であり、第三学年に至るや、第一学期にはやや遅れている程度の教科五、遅れている程度の教科二、第二学期には、遅れている程度の教科一に対しやや遅れている程度の教科六、第三学期末では遅れている程度の教科三を教えるに至り、昭和四四年一月から三月までの間、新宿区立教育相談所において学力不振の原因解明のため、田中ビネー式知能検査をうけたところ、指数六七の限界域を示し、知的能力の相対的低格化が明らかになつたが、行動面では、礼儀正しく、協調性があり、級活動も積極的で、ある程度の統率力もあり、生活態度も常時几帳面である等好評価をうけているものであつて、前記(1)後段認定の事実と比照し、通観すると、原告は本件事故発生前、すでに知的能力面では限界域またはこれに近い普通域に属し、もしくはいわゆる晩成型の人格であつたものというべく、本件受傷のため、知的能力面の発達上軽度の遅れを招いたものの、情意面の成長には殆んど影響を蒙らなかつたものといえること、さらに原告は、心身共に成長の途上にあり、将来の発達またはその性向の可塑性を優に期待しうること、

(4)  なお原告の手術痕は、左側後頭部に、幅0.5糎、長さ二二糎直径約一一糎の半円形をなし、該部分には発毛の可能性もないが、他の頭髪によつて、概ね被覆し得、外貌の変化をきたす程度にはいたらないこと。

(二)  逸失利益

本件口頭弁論の経過に徹すると、原告は、はじめ昭和四三年四月一日から概ね五五才に達する昭和八九年三月末日までの、外傷性てんかんの診療費現価五〇万円を訴求していたところ、これを撤回し、労働能力の喪失損として現価一七五万円を訴求するに至つたことは明白である。しかし前示のとおり原告は外傷性てんかんに罹患している蓋然性が高度であるが、将来にわたり、二週間に一回程度の診療をうけ、抗けいれん剤を一日三回連用し続れるときは、常人に遜色のない生活を過しうるから、右後遺症の存在をもつて、直ちに将来の労働能力の三五パーセント減を招来するものとなす原告の主張は、採用できない。

しかし前記のとおり、原告が今後常人に比し格別遜色のない労働の機会と能力を確保・維持するには、診察と抗けいれん剤の連用とを要するのであるから、斯種出捐を余儀なくされる点は、後記慰謝料の算定にあたつて考慮することとする。

(二)  慰謝料 二八六万円

叙上事実を総合すると、原告が既に蒙り、将来にわたつて蒙るべき苦痛の慰謝料としては、二八六万円とするのが相当である。(因みにその算定基準を略示するに、入院期間一〇万円、昭和四三年三月末日までの通院期間中の分一八万円、その後の診療および後遺症に対するもの七〇万円、昭和四三年四月一日から昭和八九年三月末日にいたる四六年間にわたり、ほぼ常人に等しい生活行動を営むための診察および抗けいれん剤の連用に要する出捐分一八八万円―年間九万余円から蓋然性の点を考慮し、一万余円を減額する。)

(四)  過失相殺の適用と損害の一部填補

被告が原告に対し治療費等合計四四万五九一三円を支払つたことは当事者間に争がないから、他に主張立証のない本件事故より原告の蒙つた総損害額は、これと前記二八六万円との合計三三〇万五九一三円と解すべきところ、前示一のとおり本件事故発生につき原告にも概ね一割五分程度の減額事由があるから、被告に対し賠償を求めうるのは、二八一万円であり、これから前記四四万五九一三円を控除すると、残額は二三六万四一八七円となる。

(五)  弁護士費用

弁護士報酬規定の部分については当事者間に争がなく、その余の部分については原告法定代理人上原国男尋問の結果によつてその成立を認めうる甲第五号証と弁論の全趣旨によれば、原告主張の請求原因(三)の(4)の事実を認めうるところ、本件事案の難易、審理の経過、前記認容額等諸般の事実を考慮すると、そのうち本件事故と相当因果関係にたつのは、二三万円であると解する。

三よつて被告は原告に対し、二五九万四一八七円およびうち金二三六万四一八七円に対する本件不法行為後である昭和四三年四月一日から完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払義務があるから、原告の本訴請求は右限度で正当として認容し、その余は失当であるから棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九二条、八九条、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して主文のとおり判決する。(薦田茂正)

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